約 3,811,011 件
https://w.atwiki.jp/powerlight/pages/24.html
チート集を一様upしてみます。 Wifi接続ではしようしないように・・・ ダウンロード
https://w.atwiki.jp/majikon/pages/70.html
メニュー/2010年10月13日/【海外】マジコンメーカー「ニンテンドー3DSでもうちのマジコンは動く」 #blognavi
https://w.atwiki.jp/culdcept/pages/148.html
○ケン・ジュリ等めくり対策 867 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/09/26(日) 00 01 08 ID TyJJppJY0 いぶき使ってPP800くらいになったんだけど、ケンとかジュリとかに めくり→ぺしぺし→めくり→ぺしぺし→めくり→ って繰り返しやられるとどうしようもなくなっちゃうんだけど どうやって切り替えしたらいい? 868 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/09/26(日) 00 05 17 ID TKrK1tO60 ぺしぺしの最中にEX風斬り連打しとけばいいよ 869 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/09/26(日) 00 10 13 ID TyJJppJY0 868 ありがとう めくりを撃ち落すことはできない? 870 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/09/26(日) 00 16 17 ID Q4PYfU9Q0 ケンのめくりなら中足払いでスカせるかもしれないので着地を投げれるかもしれない 871 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/09/26(日) 00 24 47 ID o9ZSHTvs0 近大K、さがって4中P、J小P、J小K、空投げ等で落とせないこともない。 けど起き上がりに重ねられるとそうもいかない。 小足や中足でスカすとか、スラや霞で拒否という選択肢もある。 素直にガードもいい。 そもそもめくりを多用する相手には、その間合いを警戒するというのも大事。 873 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/09/26(日) 04 28 03 ID 0Njtaw.E0 いぶきは飛び込み捌く手段だけは多いからね 間合い管理と使い分け命 ○対ケン立ちまわり 908 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/08/04(水) 00 27 01 ID d/mheKXM0 俺もケンには全く勝てない。 ハッキリと動きが単純な相手でもさばききれない。 PS3 PP2000前後のケンですらダメ。 飛び込み中Kの裏表、そこからの移動投げ、若しくはコンボ コアコパ昇竜が出来る程度のケンにボロボロ負ける。 3 7っていいたい位ダメ。だれかアドバイスください。ケン?雑魚だろ。ってくらいの。 910 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/08/04(水) 01 10 23 ID mQd5q.kU0 飛び込みの表裏は数こなして覚えろとしか言えないよね 移動投げと打撃の択は遅らせグラップしっかりと、もしくは小足やコパガード後バクステ連打 読まれて移動昇竜や一点読み前ステでもされなきゃ前蹴り当てられる程度で済んだりもする 立ち回りは中距離(ケンの前蹴り先端付近)でセビ見せて前蹴りにプレッシャー与えつつ飛びを警戒 前蹴りセビ取ったら即開放バクステ LV2は理想だけど拘ってると昇竜割り込み間に合ったりしちゃうので注意 波動は出来るだけスラ合わせる 要の前蹴りにセビ合わせてれば大抵のケンは飛んで4中Pもらって死んでくれる 軌道変える 起き攻めは昇竜当たらないようにクナイ投げとけばいいんじゃね ただ食らい判定の問題か裏周りだと密着しにくくTCの中P2Hitしにくいからそこだけ注意 あと大竜巻は食らっても鎧確定だけどEXじゃないと喜び勇んでガチャ入力してると 実は中竜巻でJされて乙ってことになるから気をつけろよ 以上ケン勝率60% PP4500~5500行ったり来たりの戯言でした 911 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/08/04(水) 01 16 38 ID mQd5q.kU0 まーた途中送信だよ・・・ 9行目 軌道変えるEX竜巻も早め4中P対空なら一方的に勝てることが多い 実際リュウよりはマシなんだろうけど最終的に不利付きそうな組み合わせな気がする ○wiki対策 944 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/06/23(水) 23 07 49 ID D8nTDhKw0 Wikiのケンのキャラ対策のいぶきの項目で、 開幕のとこになぜか「しゃがみガード安定。 」 って書いてあるw 面白いので、俺はケンが来たら開幕で飛燕が当たるか試してしまうw ちなみに結構当たる。 ○待ちケン対策 102 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/05/06(木) 17 19 42 ID 5zxGvHgI0 ガン待ちのケンに、1ラウンドも取れずに負けた・・・ 波動と小昇竜を使う要塞のようなケンにどうやって近づけばいいんだろう。 104 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/05/06(木) 17 33 37 ID xZHAHzWMO 102 ケンは波動が弱いから要塞は無理でしょ。波動にEX首折りとかスラしてる?ケンは見てから割と楽に入るよ。で、まず玉を黙らす。 前中Kはセビを撒きながら抑制。 飛んできたらは揚面で全落ち。 相手の中足の間合いは凄くダルいからこの距離は避ける ○6中K蹴り対策 82 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/05/06(木) 11 57 29 ID yDfgqaG60 リュウは中足大足の間合い外なら割と自由に動けるからいいんだけど、 ケンは前蹴りがあるからかなりキツイ気がする。 スラとかち合うとめり込んで死ぬし もうバックジャンプ苦無しかやることない 86 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/05/06(木) 12 06 08 ID 1i7fi2gg0 82 これもごまかし程度にしかならんけど 中距離、多分は当たらないところで立ち中Kに旋か首折り仕込むと相手の前蹴りに当たることあるので少しだけマシになるかも ウルコンあるときはHJウルコンいれる 空振りだとHJかからない+持続にヒットする時もあるので通常よりも操作難易度もやや落ちる 87 :俺より強い名無しが呼んでいる:2010/05/06(木) 12 18 20 ID ZJMheA.wO ケンの前蹴りでオラオラを抑制するには セービングちらつかせるのが1番なんでないの セビちょいためと、セビから即前後ステの使い分けでプレッシャーかけるしか あとは膝と中足置くくらいしか出来んし もちろん波動多いならスラも使えるし 破心の利点はコンボダメージの底上げと大足への確反だけど、それよりは昇龍にリスクを与える方がいいんじゃないかな? 豪鬼の昇龍は2段目セビステには確定したけど1段目セビステだと無理だった
https://w.atwiki.jp/compels/pages/415.html
△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 結城美柑が死に行く中。 戦略用エンジェロイド・カオスは必死に沙都子の意識が戻る様、呼びかけていた。 こと戦闘能力ではエンジェロイドの中でも最強を誇る彼女だが。 医療用エンジェロイドではないため、沙都子の状態を回復する事は出来ない。 「おねぇちゃん、起きて。早く…一緒に逃げよう……!」 そう言って、未だ目覚めぬ沙都子にカオスはランドセル掲げた。 それはヤミが有していた物であり、悟飯との戦闘で吹き飛ばされたのを回収した物だ。 悟飯を誘導する事は出来なかったけれど、ちゃんと収穫はあった。 だから、後は沙都子が目覚めるだけで逃げられる。 そう訴えるが、沙都子は一向に目覚めない。 「沙都子おねぇちゃん、ごめん……!」 悟飯の動きが読めなかったのと、意識のない沙都子の負担。 そして自身の両翼の損傷により今迄実行に踏み切れなかったが。 自体は逼迫している。こうなればもう、沙都子の意識の回復を待たずに離脱する他ない。 カオスは覚悟を決め、応急的な自己修復が終わったばかりの羽を広げる。 悟飯は未だ結城美柑という少女に視線を落としたままだ。行くならば今しかない。 沙都子を優しく慎重に抱きかかえると、カオスは機械的な己の両翼を展開し。 エンジェロイドの領域である、空へと羽ばたこうとした。 「───あっ、待て!!」 だが、それよりも一瞬早く。 カオス達の行動を目にしており、声をあげる者がいた。 海馬モクバが、カオス達二人の逃亡を阻む様に呼び止めたのだ。 彼にどんな真意があって呼び止めたのかは分からない。 沙都子の逃亡を阻むためだったからかもしれないし。 或いは悟飯の状態から危険だと警告のつもりで言葉を放ったのかもしれない。 殆ど反射的な制止のため、何方の感情で言ったのかは彼自身定かでは無いだろう。 ただ、確かな事が一つだけ。 「────っ!!逃げるなぁッ!!!」 彼の呼びかけによって浪費した一瞬は、カオスにとって致命の物だったということ。 弾かれたように悟飯はカオス達の方へと向き直り、気弾を発射する。 槍のように一直線に迫って来るエネルギーを前に、カオスは瞬時に演算を行う。 迎撃及び武装の展開、不可。回避、損傷した翼(ウイング)の条件下において、不可。 耐久、可能。しかし北条沙都子の生存は不可。更に追撃時の生存確率───、 「………っ!」 優秀な演算能力を有しているカオスだからこそ、言葉を失う。 導かれた演算結果は、彼女にとって絶望的なものだったから。 このままでは悟飯の放った光弾に貫かれ、沙都子は死ぬ。 それだけではない、自分もここで損傷を受ければ飛行機能の維持は困難。 悟飯が即座に追撃を放ってくれば、まず破壊されるだろう。 となれば、今自分に残されたカードは、一枚しか残ってはいない。 「極大火砲・狩猟の魔王(デア・フライシュッツェ・ザミエル)!」 エイヴィヒカイトを駆動させ、再びドーラ砲を出現させる。 狙いをつけている時間は既にない。その巨大に過ぎる威容を盾にする事のみ注力する。 元よりこの兵装は消耗が大きい、現状で孫悟飯の攻撃に勝利するのは難しいだろう。 加えて今以上に飢餓状態に陥れば行動不能になる恐れすらある。 よって、この場面ではこの使い方をするしかない。 「いーじすっ!!」 前のイージスを展開し防御態勢に入るが、着弾までの時間ではそれが限界だった。 ────ゴォオオオオオオッ!!交差の瞬間、落雷めいた音が響いて。 次瞬、轟音と衝撃、そして凄まじい熱がカオスに襲い掛かる。 圧倒的な質量を誇るドーラ砲だが、魂の保有量は僅か且つ元の担い手程渇望のない使用者。 その上孫悟飯という指折りの強者の一撃を殆ど無防備な状態で受ければ。 如何な赤騎士の聖遺物とは言え、耐えきるのは至難の業だった。 みしみしと身体の奥が軋む音が響き、数秒後に砕ける音へと変わった。 それは、エイヴィヒカイトたるドーラ砲の砲身の一部が破損し、破壊された音だった。 それに伴い、一瞬飢餓感が大幅に改善される物の───直ぐにツケの取り立てが訪れる。 「ぎぃぁ…っ!あぁあぁああああああああああああああああ!!!!」 身体を引き裂かれる様な痛みが、動力部も含めて全身に襲い掛かる。 発狂しそうなほど痛烈なダメージ。しかしカオスはある意味では幸運であった。 彼女が取り込んだエイヴィヒカイトの位階は未だ活動位階。 活動位階としては破格の威力であったが、それはあくまで聖遺物の地力の高さに起因する。 取り込んでからの時間が浅かったのも幸いした。 もし、形成位階に至るまでに聖遺物と合一化を果たしていれば。 彼女はドーラ砲が破壊された現時点を以て、機能停止していただろう。 ───かへんウィング73%そんしょう、核(コア)にも36%のダメージ…… ───じこしゅうふくプログラムのそくじしよう、ふか……… もっとも、それは即死しなかったというだけで、この後の生存を担保するものではない。 それを示す様に、ダメージチェックで算出した結果はカオスにとって絶望的な数値だった。 音速を遥かに超えた飛行能力も維持できず、墜落する。 今はまだ爆炎の煙のお陰で、追撃は飛んでこないが、時間の問題だろう。 もし追撃が来れば演算など不要。断言できる、次に悟飯に追撃されれば、詰みだと。 それどころか、今のカオスには墜落の落下ダメージから沙都子を守れるかすら怪しい。 だから、彼女は。落下までの十秒に満たない時間で、地蟲の少女に希った。 「おねがい……沙都子おねぇちゃん………」 パキパキと、自分で途絶えさせたはずの鎖を、沙都子の手首に接続。 僅か一秒半で、刷り込み(インプリンティング)を行う。 そして、己の新しい鳥籠(マスター)となった少女に、ただ縋り。 エンジェロイドとしての本懐と、存在意義を求めた。 「どうか………どうか、ご命令を─────」 分かっている。落下までの後五秒程の時間で。 沙都子が目を醒ます事など無い事位、分かっている。 でも、それでも。やっと得た”あい”を喪わないためには。 こうする事しかカオスには思い浮かばない。 もし、どれだけ可能性が低くとも、彼女が命じてくれれば。 どんな命令でも遂行できる。そんな気がしていたから。 エンジェロイドは夢を見ないと言うのに、そんな夢想に思いを馳せて。 天使の少女は瞼を閉じ、冷たい地平へと失墜する──── 「………………………たすけて」 ───地面まで、あと二秒。 カオスが“マスター“の発したその声を聴いたのは。 地面が間近に迫った、その時の事だった。 “命令”が思考回路と動力炉に届いた瞬間。 先ほどまで感じていた飢餓感が消え失せ、爆発的な力が満ちる。 ────自己進化プログラムPandora起動。 ────タイプε・Chaos ────バージョンⅣ起動。 自己進化プログラムPandora。 エンジェロイドに搭載された戦闘能力、電算能力、感情制御の三つの基本機能のうち。 感情制御が一定の閾値を大幅に超えた時のみ発動する、四つ目の“進化機能”。 無論の事、それは乃亜のハンデによって今迄制限されていた。 更に、元々エンジェロイドが単体でPandoraを起動する事は困難を極める。 何故なら、彼女達の存在意義とは主人(マスター)なのだから。 例え自己の生存の為であっても、Pandoraを起動できることはまずない。 しかし、何事にも例外は存在する。この地に招かれていたエンジェロイドのもう一体。 自身の機能停止と引き換えにPandoraを起動するに至ったニンフがその証明だ。 本来制限下における電算能力では、主催にハッキングを仕掛けるのは不可能だったが。 Pandoraを起動する事によって、素粒子ジャミングシステムを展開。 ニンフは難行を見事成し遂げて見せた。これが意味する所はつまり、 海馬乃亜の制限能力も絶対のルールではないということ。 それを裏付けるように、カオスもまたPanndoraの一時的な起動へと至る─────、 「いーじす……える………!」 カオスの姿が変貌を遂げ。 破損していた筈の漆黒の翼が、一瞬の内に修復され再び羽ばたく。 墜落していた体を持ち直し、瞬きより遥かに短い時間で30メートル近い上空へと飛翔。 同時に完全にされた絶対防御兵装イージスを再展開することによって。 今だ周囲を包む爆風や粉塵、G(重力負荷)から沙都子の身体を保護する。 「───な…何なんだお前はァッ!!!」 爆風を切り裂いて撃ち落とした筈のカオスが現れると、困惑が悟飯を襲った。 気は未だに感じないが、しかし。姿の変わったカオスは先程までとは何かが違う。 此処で殺しておかなければならない。そうでなければ、父にも累が及ぶかもしれない。 そう感じさせるだけの“何か“を、今の天使の少女は宿していた。 迅速に両手を突き出し、狙いを定める。咄嗟に飛行を妨害するために放った一撃とは違う。 今度は脅威を消し去るための一撃だ。一切の仮借なく敵を沈黙させるための一撃だ。 「消えろ……ッ!!」 「アンチ知覚システム───」 悟飯が発射体勢に入ると同時に、カオスも動く。 レーダーによって感知した少年が放とうとしている熱量は、異常を極めていた。 Pandoraを起動した現時点の自分すら及ばず、本当に生物かどうかすら疑わしい。 ともすれば星一つ、本当に砕ける可能性すらあるエネルギー量だ。 この地においてはPandoraを起動させたエンジェロイドすら、絶対者には成りえない。 それを認めた上で、カオスは主を守る為に死力を尽くす。 「魔閃光────ッ!! 「────Medusa………!!」 悟飯が放った光線は、寸分の狂いなくカオスの元へと向かう。 その正確な起動を目にして。すごい、とカオスはそう思った。 疑心暗鬼になり、幻覚や幻聴が見える病気になっていると、沙都子は言っていたのに。 それでも高速で飛行している自分に正確に狙いをつけて。 悟空も、悟飯も。このお兄ちゃん達は、本当にすごいのだと強く実感した。 しかし、例えそうだとしても。自分だって、譲れない物がある。 もう冷たいのも暗いのも嫌だから……自分は、マスターを守ってみせるのだ。 「………なにっ!?」 悟飯が、たった今目の前で起きた不条理に驚天の声をあげる。 彼の放った魔閃光は、確かに天使の少女を貫いていた。にも拘らず。 ぶぅんという電子音と共に、北条沙都子と天使の少女の姿が掻き消える。 慌てて周囲を見渡すと、全くの逆方向にカオス達の姿はあった。 既にその姿は彼方の空へと消えかかっており、幻覚の二文字が彼の脳裏を過る。 またしても仕留め損ねた口惜しさで胸を一杯にして、悟飯は吼える。 「クソッ!くそっ!待て、逃げるなぁあああああああああっ!!!」 飛び去る最中、カオスの優秀な知覚機能は地上で猛る少年の叫びを正確に聞き届けていた。 当然、従う理由はない。イージスを展開し沙都子を護ったまま空を駆ける。 初めて自分の意志で得た主(マスター)を抱えて。死地よりもう一人の姉の元を目指す。 飛ぶ最中セルフチェックを行うと、Pandoraは後数分で再停止状態へ移行するらしい。 空のマスターが元々仕込んでいた機能か、乃亜の制限に依る物かは分からなかったが。 そうなると、カオス達がこの戦いで失った物は多かった。 悟飯の制御は失敗、武装の殆どを喪い、沙都子達がマーダーである事もバレてしまった。 これから先、より苦しい戦いになるのは、幼いカオスにも薄々理解できていた。 「でも………わたしたち、まだ翔べるよね………おねぇちゃん」 それでも、カオスは沙都子のことを疑わない。 彼女は幼さからではなく己の主への信頼から、その言葉を口にした。 まだ飛べる。飛び続ける事ができる。だって、私達は。 ────まだ、太陽に届いてすらいない。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼ 狂想は過ぎ。 どうして、上手く行かないのかな。 飛び去って行ったカオス達を見て、悟飯はぽつりと呟いた。 日番谷に、姿の見えない卑怯者たち、そして沙都子とカオス。 これで都合四人に逃げられてしまった。 父なら、師なら、きっとこんな不様は晒さなかっただろう。 もう今頃には、全員殺して次の参加者を探していてもおかしくない。 「お父さんよりも、ピッコロさんよりも、強くなった筈なのにな………」 自嘲する様に呟いて、ぶんぶんと考えを切り替えるために被りを振るう。 まだこの場にはイリヤ、モクバ、ドロテア、ヤミと殺さなければならない人間が残っている。 感傷に浸るのは後だ。全ては、殺してから考える。 全員殺してドラゴンボールでチャラにするまで、自身の不甲斐なさを嘆く時間なんて無い。 その事を強く再認識した、その時の事だった。 小さく鋭い風切り音を悟飯の聴覚は捉え、無言で気を張り巡らせた左腕を掲げる。 すると、金属音めいた音を立てて、何か硬い物がぶつかり、悟飯の腕に打ち払われる。 「なんで……貴方は…………」 触手のように伸ばした髪を一蹴されながら。変身の応用によって再起した金色の闇が悟飯を睨みつけていた。 美しい美貌を、悲嘆と絶望と憎悪、そして理解できないといった感情に歪ませて。 少し前に出会った時、この少年は美柑を守ろうとしていた筈だ。 それなのに、何故。何故美柑は少年の足元で横たわっている? それもあんなに血を流して。だってあれでは。もう致命傷──── 「なんで……なん、でっ…!どうして、美柑をッッッ!!!!!」 きっと息がある筈だ。美柑が命を落とす事など、ある筈がない。 今迄他の宇宙人に襲われたり、操られたことだってあったけれど。 それでも結城リトや、プリンセスたちが彼女を助けてきた。 だから今回もきっと大丈夫。彼女は助かる。助かるに決まっている。 そのためには、まずあの少年を追い払わなければ。彼は自分を敵として見ていた。 きっとそれで美柑は巻き添えを受けたのだ。ならば自分が助けないと。 早く彼女を助けて、病院──ドクター御門かプリンセス達の所連れて行かないと。 「邪魔するなァッ!!」 焦燥によって余裕は完全になくなり、変身で変化させた刃を閃かせる。 邪魔をするなら、容赦はしない。もう今の時点で殺してしまっても構わなかった。 だが、予想に反し孫悟飯はひょいと私の攻撃を避けて後退する。 そして、沈黙したまま、距離を詰めてこようとはしなかった。 敵意を込めた目で睨んでくるが、攻撃してくる様子は無い。 不気味な物を感じたが、今は美柑の確保と保護が最優先だ。 私は屈み、地面に横たわる彼女の身体を抱きあげようとした。 その瞬間、気づく。 「──────み、かん?」 手から伝わって来る感触は、いのちを感じさせなかった。 まだ温かい。けれどこれはもう、ただの肉だ。 殺し屋、生体兵器としての金色の闇は、そう告げていた。 息をしていない、脈も止まっている。瞳孔が開き胸に耳を当てれば、鼓動も止まっていた。 認められなかった。認めたく、無かった。 だって、だってこれじゃあ──── 「死んでますよ、もう」 うるさい。うるさいうるさいうるさいッ! これは…そう、確かに息は止まっているけど。仮死状態なだけだ。 プリンセスの作った道具や異星人の能力で、そうなっているだけだ。 例え本当に息が止まっているとしても、まだだ。まだ助かる。 息が止まってから脳死するまで数分は猶予があると言うから、それまでに。 それまでにドクター御門やティアーユのいる所に連れて行けば、きっと。 そうだ、支給品!奪ったランドセルには役に立ちそうな支給品があった。 あれを使えば、美柑を助けられるかもしれない。救えるかもしれない。 説明書にはリスクは書いてあったが、今気にしている暇はない。 「………!?ラ、ランドセルはっ!?私のランドセルは何処ッ!!」 彼女のランドセルは無い。既にカオスが回収して持って行ってしまったからだ。 だが、気絶していた彼女は知らず狼狽の極みといった様相で探し回るが。 直後に、腹部への猛烈な衝撃と吐き気が襲い掛かって来る。 自分が蹴られたと認識したのは、数秒かかってからだった。 「どうして………」 ふー、ふー、と荒い息を吐いて、痛みに必死に耐えながら立ち上がる。 目の前で冷たい眼差しで此方を見てくる孫悟飯を睨み。 ヤミは絞り出すように尋ね、その手を刃に変身させ、駆け出す。 「どう…して……ッ!!」 刃と化した拳に尽きる事のない怒りと悲しみの奔流を乗せて、振り下ろす。 どうしても分からなかった。何故、美柑が殺されなければならなかったのか。 悟飯は病気だと日番谷が言っていたが、それを差し引いたとしても。 彼女は殺されなければならない様なことは、何もしていない筈だ……! それなのに、どうして結城美柑が殺されなければならないのか。 疑念は殺意とない交ぜになり、凶刃へと変わる。が、振り下ろされた凶刃は届かない。 二度三度、五度六度と振り回しても、孫悟飯は回避する。回避し続ける。 「どうして……何故……何故美柑を殺したんですか─────ッ!!!」 咆哮と共に、最高硬度へ硬質化しながら伸ばした髪を悟飯の後方へと配置。 同時に自分は前方から刃の形へと変質させた両手を構えて突っ込む。 両手の斬撃を回避し体勢を崩した瞬間、同じく刃に変質させた頭髪で首を切断するためだ。 個人でありながら挟撃の態勢を作り、目の前の標的の命を終わりに導く。 もう殺し屋としての能力を、性質を抑えるつもりなど毛頭ない。 そんな矜持は、美柑を助けるためなら犬にでも食わせてしまえとすら彼女は考えていた。 混じり気のない純粋な殺意を籠めて、刃を放つ。 振るわれた桃色の刃は、果たして狙い通りの結果を齎した。 ざくり、と肉を裂く感触と音が、ヤミへと伝わる。 「な………ッ!」 だが、表情に浮かべたのは獲物を仕留めた安堵や優越ではなく。 今の彼女にあったのは、驚愕と怯みだけだった。何故なら。 振り下ろした刃は確かに孫悟飯の両掌に突き刺さっていたが。 そこから、動かすことができない。凄まじい圧力だった。 これでは捕まえられているのと変わらない。このままではさっきの二の舞だ。 それを防ぐために、硬質化した頭髪を操作し、悟飯の後頭部を狙うが─── 「何故殺しただって………?」 裂帛の想いで振り下ろした髪は、少年の黄金色の気による圧力に弾き飛ばされた。 ゴォオオオオッ!と黄金のオーラは少年の周囲で渦を巻き、変身した髪を寄せ付けない。 ならばと両腕を変化させた刃を更に巨大化させ、孫悟飯を貫こうとする。 惑星すら輪切りにする刃だ、不意をうたれれば、この怪物でも生きてはいられまい。 そう考えて、エネルギーを集中させようとした所で。 ごりごり、グチャリ、と。何かの音が響いた。 「偉そうなことを言いやがって………!」 「あっ!?あぁああぁあああぁ……ッ!!」 悟飯の言葉も耳に入らず、視線を落とすと。 刃に変えた筈のヤミの両手が無理やり掌を閉じた悟飯の手に握りつぶされていた。 皮が裂けて骨が見えるほどに両手がグチャグチャになったのを見て、ヤミに衝撃が走る。 この両手じゃあダメだ。この両手じゃ、美柑を助けられない。 あの人(リト)に手を握って貰えない。だから、早く直さないと。 ほんの僅か、数秒に満たない時間冷静さを欠いたヤミの思考を引き戻す様に。 悟飯が、糾弾の声をあげる。 「じゃあお前は───何の罪も無い誰かを、殺さなかったとでもいうのか?」 「─────ぇっ」 その言葉に、ヤミの意識が無理やり思考の海より現実世界へと帰還させられる。 脳裏に蘇るのは、つい数時間前の記憶。 ダークネスとして、欲望の赴くままに行動していた時のこと。 ────あーもう、さっさと死んでよね! ────貴方達、全員消し飛ばしてあげる ────じゃあ、死んじゃってよ! お邪魔虫共!!! 再興にハレンチでえっちぃ、絶頂を超える快楽の中での殺戮を求め行った蛮行。 その中で、美柑をも消し飛ばそうとした。 「ち、違う……私は、結城リトのために……ただえっちぃ殺しを練習したかっただけで……」 「今更、美柑さんが死んで悲しむのなら…怒るなら…どうして……何で!!」 身勝手な、シュライバーと変わらない意味不明な目的の為に。 その時その場にいた全員を。 もしかしたら余波でもっと多くの参加者を、殺そうとしていた癖に。 そして何より──── 「何でお前は!雪華綺晶さんを殺したんだぁ─────ッ!!!」 何の罪も無い、全員の命を守ろうとした雪華綺晶の命を奪ったのか。 咆哮と共に少年は膝を振り上げ、ヤミへと突き刺した。 骨が砕ける鈍い音が鳴り、衝撃で悟飯の掌に刺さった刃が抜け、ヤミが吹き飛ばされる。 (雪華綺晶……あ、の………白い人形のこと………?) ……彼女と、悟飯には知る由もなく、それ故にこの戦いには全く関係のない事ではあるが。 もし、彼女が雪華綺晶を殺害していなければ。 雪華綺晶が健在であれば、悟飯は雛見沢症候群の進行を食い止められていた。 精神干渉の経験においては実在しない人間を作り出し、現実世界を侵食する。 理外の能力と経験値を誇った彼女であれば、悟飯に差し迫った危機を早期に察知し。 その後一時的にイリヤから契約を移し、悟飯を雪華綺晶の媒介とすれば。 狂戦士の狂化すら完全に抑え込む薔薇乙女としての能力を、彼女は遺憾なく発揮して。 少年が病魔に侵されるまでの時間に猶予を持たせることができた。 そうなれば、今この局面で悟飯は雛見沢症候群を急激に悪化させず。 結城美柑が死ぬことは無かったかもしれない。 雛見沢症候群は元々感染したとしても、重症化まで至るケースは稀なのだ。 つまり、野比のび太が金色の闇を連れてきたから雪華綺晶は死亡し。 雪華綺晶が死んだから、悟飯の雛見沢症候群の進行を食い止められる者がいなくなった。 その結果、悟飯の症候群の重度化によって引き起こされた混乱で、結城美柑は死んだ。 消し飛ばす事は出来ずとも。金色の闇は、ちゃんと結城美柑の殺害に貢献していたのだ。 ───アンタと関わる奴は皆不幸になるんだ! 吹き飛ばされながら、以前美柑が操られ、自分の刺客にされた時に。 その黒幕であった異星人の殺し屋、アゼンダにかけられた言葉が蘇った。 私が雪華綺晶と言う人形を壊したから、孫悟飯はこんなに怒っているのか? 私が雪華綺晶を殺したから、病気を患っているという悟飯が不安定になったのか? そして、不安定になった悟飯が、美柑を殺したというのなら。 それじゃあ、つまり、私が美柑を───── 「違うッ!!!」 変身した髪の毛を支えとしてヤミは体勢を立て直し、叫んだ。 そんなことは無い。そんな事はあってはいけないんだと。 えっちぃことは素晴らしいこと。快楽の中で死ぬのが知的生命体にとって一番の幸福。 ハレンチな事が間違っている筈がない。ハレンチを彼に捧げる事が、間違っている筈がない。 えっちぃ死を、えっちぃ殺しを求めていた自分が間違っていた訳はない……! だって、間違っていたら。間違っていたことを認めてしまったら。 殺し屋の、アゼンダの言葉が正しかったと証明されてしまうから。 その後直ぐにアゼンダの言葉を否定してくれた彼(リト)を。 自ら裏切った自分を、直視してしまう事になるから。 「貴方だって……ハレンチの素晴らしさに気づけば怒りも収まる筈です!!」 少し前に迷いはしたが、その是非を教えてくれるはずだった親友は、死んでしまった。 だから彼女が選んだのは、ダークネスとしての自分への逃避。 もうそれ以外に、千々に千切れそうな心を護る術を、彼女は持ち合わせていない。 何故なら、この島に結城リトはいないし、これからも現れる事はないのだから。 恐らく彼女は認めないだろうがしかし。結城美柑の死で、それを察してしまった。 だから自分が殺し合いに乗った原点へと、立ち返る事を選んだ。 悟飯へ向け、敢えて髪を硬質化させず触手のように殺到させた。 払いのけようとする悟飯だが、分散した髪の束はしゅるしゅると彼の四肢に巻き付く。 「うふふ……触手プレイなんて、えっちぃですよね」 不敵に、以前の戦いで悟飯を翻弄した時のようにヤミは微笑むが。 その笑みは、前回の戦いで見せた真実淫蕩な物とは違っていた。 引き攣り、ぎこちなく精彩を欠いて。彼女の動揺が感じ取れた。 とは言え、そんなことは。 「はああああああああああ………ッ!!」 悟飯にとっては、何処までもどうでもいい事だった。 全身の気を高め、四肢に力を籠める。今度は髪を圧力で跳ねのけるのではなく。 一瞬、爆発的に気を高める事で──── 「えっ」 ヤミの浮かべていた笑みが消える。触手プレイなど、楽しむ暇はない。 せめて首に巻き付け、瞬時に首の骨を折る事を試みていれば。 この後襲い来る痛みは回避できていたかもしれないが、意味のない話だ。 既に、彼女の耳朶には、ぶちぶちと何かを引きちぎる音が響いているのだから。 そして、左の頭皮に灼ける様な痛みが、駆け巡る。 「う゛ああぁああああッ!!!」 髪を強引に、頭皮ごと引きちぎられたのだ。 悲鳴をあげながら、ヤミは引きちぎられた左側頭部を抑え後退を行う。 訳が分からなかった。こんな、こんなデタラメな出力。 もし前回の戦いで引き出せていたなら、自分にあそこまで無様な敗北など………。 そう考えつつ必死に後方へ下がるが、前回と今回の戦いで決定的に違う点はいくつもある。 まず前回の戦いでは悟飯は強敵との連戦で消耗しきった状態であり。 対するヤミは小競り合いこそすれ殆ど万全に近い状態だった。 だが、今のヤミは雪華綺晶の反撃で少なくないダメージを負い、それが抜けきっていない。 更にあの時の悟飯は自身の黒い衝動に怯え、そんな状態の中で守る為に戦っていたのだ。 再び周囲を巻き添えにしない事に気を取られて集中は乱れ、動きに無駄が多かった。 精神から来る疲労も、今とは比較にならなかった。だが今の彼は違う。 今の彼は、もう。誰も守ろうとはしていない。 ヤミ自ら行った指摘によりペース配分をし、全ての力を、相手を殺す為だけに振るっている。 ────致命的だったな、超サイヤ人を知らなかったのは…… そして、何より。 彼女は、超サイヤ人を知らなかった。 宇宙の帝王すら絶望させた、伝説の存在を。 「が……ッ!」 髪を引きちぎられた痛苦か回復する暇もなく。 後退した所を骨まで響く衝撃と共に顔面を打ち据えられる。 彼にとっては軽いジャブだったろうが、ただの一発で、意識が飛びそうになった。 反撃は愚か、防御の姿勢を取る事すらできない。 たたらを踏むヤミに、更なる追撃が襲い掛かる。 それはさながら破壊の嵐とも呼ぶべき拳打の爆撃だった。 もうヤミは先ほどからワームホールを形成していない事に悟飯は気づいていた。 距離を取る選択肢が抜け落ち、反撃の時も闇雲に刃に変えた腕を振り回すだけだ。 エネルギーが無くなったか、それとも一種のパニック状態なのか。 きっと両方だろうと判断し、それなら好きに嬲れると思い至る。 「ガッ!グッ!げぇ、あ…ッ!ぶっ!ぎぃいい、がああああああッ!!!」 悟飯は殴った。殴った。殴って殴って殴って殴り続けた。 消耗を抑える為に無駄な動きは最小限に、けれど相手を確実に粉砕できるように。 肩を、顔を、腹を、脚を、胸を。無防備な部分は全て打ち据えた。 ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!!ゴッ!!!……ぐちゃあっ。 一撃の度に殴り飛ばした部分から、真っ赤な液体とカスの様な肉片が飛び散る。 骨に当たっても、気で掌を覆っているから傷つく心配はない。 「ふふ……あはははは………」 パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチパンチパンチパンチパンチパンチ。 ジャブの連打。それだけでヤミの美しい美貌は砕かれ、丹念に丹念にすり潰される。 顔は痣だらけで、瞼は腫れて殆ど開かず、鼻も頬の骨も折れて。 前歯の殆どはへし折れており、彼女の知り合いがみたら思わず顔を背ける損傷だった。 結城美柑が今の彼女の顔を見る事無く旅立ったのが、幸せと思えるほどに。 そして、それを成し遂げた悟飯の精神は奇妙な高揚を覚えていた。 楽しい。勝てなかった相手をぶちのめすのは愉しい。 守られている癖に、自分を省みてくれない足手纏いの視線に怯えなくていい。 お父さんが言っていた、戦うのは愉しいと言うのこういう事か。 確かにワクワクする。初めて闘いが好きになれるかもしれないと思った。 あぁ───今の自分は、自由だ。 「ふふっ…あ は は は は は は は は は は は は は は ! ! !」 ヤミに反撃する力はもうないと判断し、ジャブからストレートへと切り替えぶん殴る。 は、という笑い声が響くごとに三度ヤミの全身に拳が突き刺さり。 敵を呑み込み粉砕する拳の津波、突きのラッシュ。 宇宙を流離い、命じられるままに惑星を蹂躙し、美味な食事と美酒に酔う。 それこそがサイヤ人であり、サイヤ人の本能がヤミを蹂躙する。 「─────ッッッ!!!!」 最早悲鳴すら上げらず、壊れた人形のように吹き飛ばされていくヤミ。 当然、悟飯は追いかける。人間を超えた頑丈さを誇るあの女の息の根を止めるために。 満足に反撃すら行えなくなった死に体の敵に、トドメを刺すべく。 だが、この時。彼は明確に見誤った。最強の対惑星兵器の性能を。 「死ね……………!!!」 腫れあがった瞼を見開き。 憎悪と殺意が熟成された瞳で、眼前の抹殺対象を射殺さんと見つめる。 同時に、ゼロカンマ数秒の時間で、右手を変身(トランス)させ、ブレードを作る。 桃色の大剣(ブレード)は、先の戦いで全員を吹き飛ばそうとした時と同じ。 星一つを切り裂ける。そう言われても何ら不信を抱かない規模のエネルギーを秘めていた。 散々殴られながらも、彼女はじっと待っていたのだ。 乾坤一擲の、文字通りの切り札を叩き込める、その一瞬を。 ───君は摘みとるために生まれた兵器なのだ。 振り下ろす瞬間、かつて最愛の人が否定してくれた言葉が浮かぶが。 今は、兵器でもいい。ヤミはそう考えていた。 美柑を殺したこいつを殺せるのなら、今だけ兵器に戻っても構わない。 その想いと共に、孫悟飯の殺害をただひたすらに願って、桃色の殺意を振り下ろした。 「────そん、な」 「星は壊せても……たった一人の人間は壊せないみたいだな」 直後、金色の闇に去来したのは、かつて宇宙の帝王が感じた絶望。 死力を尽くした斬撃は、受け止められていた。 両掌をぴったり合わせ、その隙間で刃を受け止める。真剣白刃取りの態勢で。 初撃に失敗すれば、もうその攻撃を維持できるリソースは今の彼女にない。 ぽんっ、とファンシーな音と共に、刃は消え失せ、悟飯が駆けてくる。 エネルギーが今の攻撃で底をついた彼女ができるのは、もう助けを乞う事だけだった。 「助け……たすけて、結城リ────」 ────ゴッ!!!!!という、何かをぶちのめす音が空間を震わせる。 助けを乞うセリフは、最後まで紡がれることは無く。 当然ながら、結城リトが現れる事も無い。 空中でくるくると独楽のように舞ってから、100メートルは後方へ殴り飛ばされて行く。 そして、ぐしゃりと地面に落下するとピクピク痙攣し、今度こそ完全に沈黙した。 もう変身を応用して、復活する事も出来そうにない。 蟲の息の彼女に、吐き捨てるように悟飯は告げる。 「今更……被害者ぶるなよ」 それが、遺恨試合の幕引きだった。 「ちっ………」 トドメを刺そうと、殴り飛ばしたヤミの元へ赴く最中。 小さな気と少し大きな気が離れようとしているのを感じ取った。 この気は覚えている。何しろ、崩壊の原因となった二人組の気であるのだから。 イリヤやヤミよりは遥かに弱いので後回しにしていたが、逃すつもりは無い。 むしろこいつらだけは絶対に逃がさず殺すと決めていた。 悟飯はヤミと二つの気が遠ざかる方向に何度も視線を彷徨わせて。 ヤミが動く気配がない事を確認すると、無言で駆けだす 狂気は、まだ終わらない。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼ この殺し合いから脱出したら、二度と子供の姿などするものか。 ドロテアはそう決意しながら、一刻も早く死地より抜け出そうとしていた。 だが、それには問題があった。 「えぇいモクバ!イリヤとやらは諦めろ!連れていく事は出来ん!! 意識のない足手纏いのせいであのバケモノに追いつかれたらどうする!!」 「イリヤは助けてくれたんぞ!?それに俺達だけで逃げても仕方ないだろ!! 断固として、助けるっ!いやならお前ひとりだけでも先に逃げろ!!」 モクバが逃げようとした時に、イリヤも連れて行くと言い出したからだ。 ドロテアも翻弄するエルフの剣士が健在であればその選択肢もあっただろう。 戦力が欲しいのは事実。だが、イリヤなる小娘は、現状戦力として見なせない。 彼女の状態は悟飯に瞬殺され、未だ気絶。重傷も負っている可能性が高いただの怪我人だ。 そんな足手纏いに構っていられる状況ではないのだ。現状は……! 何時、孫悟飯が此方に気づき襲ってくるか分からない瀬戸際も瀬戸際なのだから。 そして、今襲い掛かられれば間違いなくデッドエンド。二人とも死ぬ。 「ぐぅう~~~……!!」 だが、時間の浪費と言う視点で言えば今こうして言い合っている時間が一番無駄だ。 この有様ではモクバは例え死ぬことになっても自分の意志を曲げないだろう。 独りだけで逃げる事も考えたが、モクバを今喪えば対主催の微かな望みも潰える。 ここは自分が折れるしかない、そう判断した。 「えぇい分かった!ではさっさと連れて行くぞ!!急ぐんじゃ────!」 「何処へ行くんだ?」 背後からかけられた声に、一瞬で凍り付く。 だから追いつかれると言ったじゃろ…そう心中で零しながらドロテアは振り返る。 すぐ背後には、想定した通り。肉食獣の様な笑みを浮かべて、孫悟飯が立っていた。 どうやら、腹を括るしかないらしい。ドロテアは泣きそうになりながら覚悟を決めた。 そして、背後のモクバの襟を掴み、彼を投げ飛ばしながら叫ぶ。 「モクバッ!離れろっ!!このガキは妾が何とかする!!」 「ド、ドロテア───」 投げ飛ばされ、全身を強かに打ちつけて呻くモクバだったが、生憎気にしている暇はない。 今は自分が活きるか死ぬかの淵に居るのだから。 魂砕きを構えながら、ドロテアは最後の賭けに出る。 「何とかする、か───やれるものならやってみろ!!」 気を放ちながら、悟飯が迫って来る。 殺意一色に染まった威容を目にして、ドロテアは何故妾がと脳内で何度も叫んだ。 こんな化け物と戦わせるなら、ブドーやエスデスを連れてこい、と乃亜に訴えたかった。 だが、今は己の不幸を嘆いている時ではない。賭けに出るべき時だ。 出なければ待っているのは死だけ。彼女の優秀な頭脳はそう決断を下し。 迫りくる死を前にして、最後の隠し札を切らせた。 「────セト神ッ!!」 藤木との戦いで手に入れていたスタンド。セト神。若返りの能力。 この能力で悟飯を若返らせ、力を奪った後アブソディックで吸い殺す。 それが、ドロテアの考えた最終防衛ラインであった。 半ば祈るような心持で展開したセト神は一直線に突き進み、悟飯の影を捉える。 「あうっ!?」 左フックを放つ悟飯の姿が一瞬で幼い物となり、彼の顔に驚愕の彩が現れる。 金髪の変身も解除され、明らかに弱っているのが見て取れた。 いける、ドロテアはほくそ笑んだ。このまま幼児にまで戻してくれよう。 この拳さえ魂砕きで防御できれば、セト神の最大出力を悟飯へと叩き込むことができる。 そうして子供に戻した後、生き血を存分に啜って、パワーアップを果たすのだ。 どうにもならないと思っていた相手に対する勝機、光明がドロテアへと差し込む。 (やはり最後に笑うのは妾!このガキを殺し、妾を疑った他のガキの口も封じ──は?) ドロテアは知らなかった。 孫悟飯がまだ五つにもならぬ時に、既に成人を迎えたサイヤ人に痛打を与えていた過去を。 十にも満たない年齢で、宇宙の帝王も瞠目させる一撃を放った過去を。 知らなかったが故に、ハンデによって通常よりも遥かに能力の効き目が遅いセト神を切り札に選んでしまったのだ。 「うげぇあぁあッ!!!」 それでもまだ拳が発射態勢に入っていなければ勝機もあったかもしれないが。 セト神が効力を発揮したのは、既に悟飯が拳を発射した後だった。 よって、多少リーチが変動したとしても既に発生した運動エネルギーは消失しない。 この殺し合いに参加させられている邪悪の帝王が能力を発動をさせた瞬間に。 ジョースターの血統によって頭蓋に拳を叩き込まれ、痛烈なダメージを負ったのと同じく。 多少若返ったとはいえ孫悟飯の本気の拳が相手では、ドロテアの防御など紙同然だった。 魂砕きの防御も、想定以上のパワーとスピードで殴られれば、防御の意味をなさない。 鉄の棒で頭部を強打されたのと変わらない被害を彼女にもたらす。 殴り飛ばされる瞬間、ドロテアは何かが砕ける音を聞いた。 それはまさしく、彼女の頭蓋骨が衝撃により破壊された音だった。 「あ…頭が痛い…立ちあがれんッ!き、気分が悪いじゃと…… な、なんて、事じゃ……こ、この妾が……!」 殴り飛ばされた先で立ち上がろうと藻掻くが、側頭部の痛みでうまくいかない。 そして、背後を見てみれば元通りの姿の孫悟飯が歩み寄ってきていた。 気を失っていないはずなのに、何故セト神の能力が解除されている? 困惑とともに周囲を見渡すと、彼女の近くにセト神のものと思わしきDISCが落ちていた。 側頭部に頭蓋骨が割れるほどの衝撃を受けたことで、強制的に排出されたのだ。 そして、スタンドDISCが使用者から排出された事により、効果も解除された。 何とかもう一度手に入れようと手を伸ばすが、届く前にDISCが爆散する。 孫悟飯が、気弾を飛ばし破壊したのだということは、彼を見ずともわかった。 そしてそうなればもう、ドロテアに打つ手はなく。 「やっ、やめろ………っ、ぁ………っ」 ドロテアを殺すために進む悟飯に対し。 モクバが静止の声を上げるが、それが聞き入れられることはなく。 ジロリと一瞥されるだけで、悟飯から凄まじい威圧感と殺気を受けて、竦んでしまう。 だって、悟飯のモクバを見る瞳は、人が人に向けるものではなく。 敵とすら見なさない、けれど絶対に殺すという駆除すべき害虫に向ける視線だったから。 それを目にした瞬間、どんな言葉を尽くしても説得は不可能だと悟る。 自分とドロテアは、ここで殺される。確信めいた絶望が、モクバの全身を凍り付かせた。 「死ね………!」 これ以上、ドロテアにエネルギーを裂くのは無意味だと思ったのだろう。 悟飯は処刑方法を、撲殺に定めたらしい。 次に殺されるのはまず間違いなく自分だが、モクバの脳裏に他人事の様な考えが過った。 彼は、動けなかった。海馬コーポーレーションの副社長を務めるほどに。 年齢不相応に聡明で、優秀な頭脳だったから理解してしまったのだ。 殴ろうと声を上げようと、自分では孫悟飯を止めることはできない、と。 モクバらにとって孫悟飯は、荒ぶる神そのものだった。 人間が、太刀打ちできる相手ではない。 「兄サマ……兄サマ……俺………!」 モクバは生まれて初めて心の底から震え上がった…真の恐怖と、決定的な挫折に。 彼は、彼らは間違いなく絶望の畔に立たされていた。 だが、どうすることもできない。恐怖は容赦なく彼らの手足を雁字搦めにして。 後は冷たい死という水面に放り込まれるのを待つだけ─────、 「待って、悟飯君」 そんな時だった。彼女の声が、その場にいる全ての者へと届いたのは。 愛らしく、しかし凛とした清廉さと、揺らめく焔の様な力強さを伴った声で。現れた少女は。 先ほどまで、気を失っていた筈の少女は。 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、悟飯へ確かな意思を籠めた声で告げる。 「まだ、私は負けてないよ」 いつの間にか目を覚ましていた彼女は、揺るぎないたった一つを抱きしめて。 決して勝ち得ぬ相手へと対峙する。 彼女の姿は、月の光すら刺さない無明の夜において。 冷たい漆黒の水面に煌めく、星のようだった。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼ 『いけません、イリヤ様。撤退すべきです』 「それじゃあ、皆と…何より悟飯君を救えない」 『それでも…っ!例え夢幻召喚であっても…悟飯様には太刀打ちできません。 私の立場では無謀な特攻を許すわけにはいきません。美遊様や姉さんに顔向けが───』 「ありがとう、サファイア。でも一応、考えがあるの……本当にか細くて拙いけど…… これなら…悟飯君に勝てるかもしれない。止められるかもしれない方法を思いついたの」 『………念のため、お聞かせ願います』 「───────、──────。─────────」 『……っ!駄目です、イリヤ様。幾ら何でも勝算の低すぎる賭けです。 それに、正規のツヴァイフォームでは無いとは言え、貴方への負担が────』 「負けちゃったら同じことだよ、サファイア。 それに何より─────ここで逃げる子が、美遊と世界を救えると思う?」 『それは…ですが…………!』 『───────っ』 『────』 『───、』 『………分かり、ました』 「サファイア…」 『美遊様がイリヤ様を信じた様に、私もイリヤ様に賭けましょう。姉さんに代わり、最後まで御供致します!』 「………っ!ありがとう……サファイア」 『いいえ、それよりも計画達成の可能性を上げられそうな手段を一つ、思い至りました』 『───────、──────。─────────』 「………!うん、分かった。その方法で行こう」 『えぇ、では、まずは……』 「うん…お願い、これ以上犠牲になる人が出ない様に力を貸して」 ───────バーサーカー!!! △▼△▼△▼△▼△▼△▼ 悟飯には意味が分からなかった。 さっき、叩きのめしてやったばかりなのに。力の差は嫌と言う程分かっただろうに。 それでも野比のび太を利用した卑怯者の死にぞこないは、自分に挑む気でいるらしい。 「……あのまま寝ていれば、楽に死ねたのに」 「死なないし、死ぬつもりもないよ。 ここでも、元の場所でも……私にはやらなきゃいけない事があるから」 毅然とした態度でそう言って、少女はその手の聖剣を構える。 彼女のいで立ちは、先ほどまでとは少し違っていた。 下半身を包むのは先ほどまでと同じ西洋甲冑だが、悟飯が砕いた上半身の部分が違う。 獣の皮で作った胸当てだけの野趣溢れる格好に、姿を変えていた。 だが、彼女の姿の変化より注意を引かれたのは、今しがた吐いた言葉の方。 のび太を利用した卑怯者が、一体何を成すつもりなのか? 悟飯の抱いた疑問は、イリヤの続く言葉で解消される。 「私は………モクバさん、沙都子さん、紗寿叶さん達、そして……悟飯君。 貴女を助けるって、そう決めたの。だからそれまでは………絶対負けない」 彼女が述べた決意を耳にして。 悟飯が抱いたのはまず、侮蔑の感情だった。 彼にはもう既に、モクバ達を護る価値があるとは思えなかった。 それに何より大言壮語。ビックマウスもいい所だと、そう思った。 「じゃあ───守ってみたらどうですか」 だって悟飯が“こうする”だけでその後立派な誓いは果たせなくなるのだから。 イリヤに冷ややかな視線を送りながら、悟飯はモクバへと指を向ける。 これで気を放てば先ず一人脱落。例えイリヤがモクバを守ろうと動いたとしても。 放たれた気功波は先にモクバを撃ち抜き、彼女は叶わぬ理想に対する現実を思い知る。 そうなると彼は信じて疑わなかった。しかし、イリヤは悟飯の想像を裏切り。 「はぁあああああああああッ!!!」 裂帛の気合と共に、モクバには目もくれずに。 眼前の悟飯へと、吶喊を敢行したのだった。 これには悟飯も僅かに瞠目するが、同時に馬鹿めと吐き捨てる。 確かに意表は付かれたが、それだけだ。先ほど秒殺されたのをもう忘れたらしい。 彼の眼から見たイリヤは、自殺志願者としか思えなかった。 「はぁっ!」 イリヤの剣の一撃を躱し、カウンターで拳を叩き込む。 がはっと唾と嗚咽を漏らし、体をくの字に折り曲げるイリヤ、ここまでは先ほどまでと同じ。 だが、ここから先は、先ほどまでとは違っていた。 がしりと、腹に突き刺さった悟飯の腕を、イリヤは掴み。 「ぐ───、や、ぁあぁああああっ!!」 自らの頭をハンマーの様に振り上げた。 鈍い音が響き、悟飯がたたらを踏む。 完全に油断していた所を、イリヤの頭突きが悟飯の顎を捉えていたのだ。 子供の喧嘩そのものの光景だったが、この瞬間では最も効果的な一撃だった。 そのまま一度取りこぼした聖剣を持ち直し、悟飯へと打ちかかる。 当然、悟飯もただ立ったままのカカシになる訳もなく、反撃の拳が飛ぶ。 「かっ……!」 またも競り負けたのはイリヤの方だ。しかし……彼女は倒れない。 疾風の如き速さで甲冑に包まれた足を振り回し、悟飯の足を払う。 そして、そのまま平衡感覚が狂った悟飯に突進し、聖剣の腹を叩きつけた。 「この…っ!調子に乗るな!!」 激昂した悟飯が右足を振り上げ、イリヤの腹を撃ち抜こうとする。 だが、その蹴りが彼女の腹を捉えることは無かった。 凄まじい衝撃に手に痺れを覚えながらも、彼女は聖剣で受け止めたのだ。 ここで流石に悟飯もおかしいと気づく。 さっき秒殺した時のイリヤに、ここまでのしぶとさと執拗さは無かった。 無論、押しているのは悟飯の方だ。イリヤの攻撃は、悟飯に殆ど痛痒を与えられていない。 しかしそれでも、一撃でぶちのめせていた先ほどと今では、明らかに何かが違う。 それが何に依る物か考えた一瞬の隙を縫って──再びイリヤが仕掛ける。 「こ、この……!」 「やああああああっ!!」 悟飯の蹴りをすり抜け、頭を掴む。 そしてもう一度───イリヤは自分の頭をハンマーの様に振るった。 ゴッ!という音が、悟飯の鼻っ柱の上で炸裂し、彼を後退させる。 そんな、僅かに彼の攻勢が鈍ったのを見逃さず、イリヤはモクバ達に叫んだ。 逃げろ、と。自分に構わず早く行け、と。 「で、でも……」 「いいからッ!守りながらじゃ戦えない!!」 「………ッ!分かった!!」 翻弄するエルフの剣士のいなくなったモクバでは足手纏いにしかならない。 いた所で邪魔になるだけだ。彼にはもはやこの場でできる事は何もないのだから。 そんな彼がこの場で最も貢献できることを考えれば、それはドロテアを連れ離脱すること。 それが最も孤軍で奮戦するイリヤの助力へと繋がる。 口惜しい思いはあったが、ここで異議を唱える程彼は愚鈍ではなかった。 「行くぜぃドロテア!ここから離れるぞ!」 「わ…妾は最初からそうしようとしとったじゃろ……!」 側頭部から血を流し、青息吐息のドロテアに肩を貸して。 そそくさとモクバ達は離脱を始めた。 その足取りに迷いはなく、ともすれば先ほどよりも迅速な避難だったかもしれない。 「こ、の……!!逃がすか……っ!」 逃げていく二人を見て悟飯は掌を掲げ、気功波で二人を消し飛ばそうとする。 だが、それを見逃すイリヤではない。即座に悟飯に組み付き、噛みついて妨害する。 振り払おうと残った手で殴りつける悟飯だったが、イリヤは中々離れない。 さっきまでの彼女なら、確実に一発で振りほどける勢いで殴りつけても、だ。 まるでガキ大将がいじめられっ子の決死の反撃を受けている様な、そんな奇妙な景色が広がっていた。 「しつこいぞッ!!!」 苛立ちと辟易の感情を込めた膝蹴りが、イリヤの鳩尾に叩き込まれる。 たまらず口から鮮血を漏らすイリヤだったが、何故か戦意は全く衰えない。 打ちのめされても、打ちのめされても、まるでゾンビの様に立ち上がり向かってくる。 これではキリがない。体力を浪費するだけだ。 何より、しつこく食い下がって来る今のイリヤを見ていると。 どうしようもなく精神が泡立ち、首元に痒みが走る。 脳裏に、ボロボロになりながら自分を止めようとしていた少年の姿が浮かぶ。 故に彼は決断した。片手間ではなく、先に本腰を入れてこの女を殺す。 最低でも、ヤミと同じ状態にしてから、モクバ達を殺しに赴く事に決定した。 「いいさ……じゃあお前から死んでしまえっ!!」 食いついた。 愉快型魔術礼装マジカルサファイアは悟飯が標的を変える旨の発言をした時、そう思った。 そして自身が提案した策は効果を発揮しているらしいという事を確信する。 孫悟飯の力は強大だ、セイバー、アーチャー、ランサーの三騎士ですら。 彼との白兵戦は勝機はゼロに近い。宝具を真名解放する暇すら与えられないだろう。 だが、イリヤが現在所有するクラスカードの英霊の中で、たった一人。 たった一人、孫悟飯にもある程度食らいつける英霊がいた。 その英霊とはギリシャ神話最強の英霊と名高い戦士───ヘラクレス。 劣化してなおCランク相当の神秘を有していない攻撃を無効化する宝具。 十二の試練(ゴッド・ハンド)の宝具を有する彼だからこそ。 孫悟飯の攻撃を軽減し、イリヤに白兵戦を成立させているのだ。 更に、悟飯と戦うために彼女が切った札はそれ一枚ではない。 「ぐぅうう───はぁッ!!」 上書き夢幻召喚(オーバーライト・インストール)。 クラスカードの中で、バーサーカーのカードだけが持つ特性。 夢幻召喚中に別の英霊のカードを夢幻召喚する事により。 バーサーカーのクラスを継承したまま別の英霊の力を引き出す能力。 その能力を用い、イリヤはバーサーカーのクラスにセイバーを上書きしたのだ。 つまり、今のイリヤはバーサーカーを素体としながら、セイバーの剣技を扱い戦っている。 圧倒的に格上である筈の今の孫悟飯に食い下がれている戦況の裏付けは、ここにあった。 「だああああああああああッ!!!」 「はぁああああああああああッ!!!」 気を纏った拳と聖剣が相打つ。 金属音めいた衝突音の旋律が奏でられ、振るった聖剣が跳ねのけられる。 大英雄と騎士王の力上乗せしてなお、超えるべき壁は余りにも高い。 聖剣が押しのけられた一瞬の隙を突いて、マシンガンの掃射の如き拳打が少女を襲う。 「がはっ!がッ!ぶふッ!!う゛あ゛ああああああッ!!!」 金色の闇と全く同じ、ただ早く硬く、強靭な暴力が、イリヤの全身を蹂躙する。 神の護りによってダメージを大幅に軽減してなお一発一発が骨に響く威力だ。 もし、十二の試練がなければ、とっくに挽肉に変えられていたと確信できる攻撃。 全身に走る鈍痛に呻き、その事実を痛感しながら──再びイリヤは立ち上がる。 「何でだ………」 立ち上がるイリヤを見て、憤怒の中に困惑と怖気を覗かせ、悟飯が尋ねる。 彼には分からなかったからだ。イリヤの度を超えたタフネスもそうだが。 何より、のび太を利用し捨て駒にしたはずの狡猾な女が。 何故、勝てないともう分かっているハズなのに、何故ここまで自分に歯向かうのか。 道理に合わない。理解不能だ。 「さっさと……死ねぇえええええええッ!!!」 今度こそ、今度こそ冷たい大地へ沈めてやる。 困惑を振り払うように、少年は眼前の少女の息の根を止めるべく駆動を行う。 突き、手刀、蹴り、正拳、掌底、連打、連打、連打連打連打連打。 トドメに両掌を組み合わせて作った拳をイリヤの頭頂部に振り下ろして。 間違いなく死んだはずだと、いい加減死ねと、倒れたイリヤを何度も何度も踏みつけて。 ペース配分を考え戦っていた筈が荒い息を吐いている自分に気づき、漸く攻撃を止める。 しかし、しかしそれでも。 「何で、だ………!なんで!もう全部……遅いのに、“貴方”は……!」 ───それでも、星は沈まない。 はぁはぁと肩で息を吐き、愛らしく美しかった顔の至る所を腫らして。 満身創痍になりながらも、瞳の奥で鈍く輝く光は消えていなかった。 勝ち目など無いのに。悟飯が今更思い留まる事などありはしないのに。 それでも立ち上がって来るイリヤの姿は、悟飯にとっては不気味な怪物として映った。 「のび太君がやろうとしたことは、想いを……死なせたくない、から」 野比のび太は孫悟飯を救う事は出来なかった。 それは彼がひとえに弱すぎたせいだ。どんなに崇高な思いを抱いていたとしても。 意志を押し通す力が無ければ紙細工同然。だから彼は何も成し遂げる事無く死んだ。 でも、それでも思いは残った。イリヤは彼の戦いを目にして。 野比のび太が抱いていた、孫悟飯を救いたいという思いを死なせたくない。そう思ったのだ。 そして、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンには野比のび太には無かった力がある。 「何故とかどうしてだとか…理由を聞かれてもちゃんと言葉にはできない。 だけど……目の前に苦しんでいる人がいるなら、私は…私達は手を伸ばすよ。 のび太さんも、美柑さんも、きっとそうだった」 イリヤと悟飯が接した時間は短かった、更に踏み込む切欠ものび太と違い無く。 だから、彼が病魔に苦しんでいた事実を見逃してしまったのだ。 その結果、悟飯は狂い。のび太は死に、視線を傾ければ美柑までもが犠牲となった。 悟飯の言う通り、全ては遅いのかもしれないけれど。手遅れなのかもしれないけれど。 それでも、まだ自分が此処にいる。そして、悟飯も生きている。 ならば手遅れの四文字は、まだ彼女が彼女の理想(ワガママ)を諦める理由足りえない。 故に彼女は、月の光すら届かぬ無明の戦場で、星の光として剣を握るのだ。 「私は諦めない。のび太さんが、最後まで悟飯君を助ける事を諦めなかったように」 それに、と少女は続ける。 脳裏に浮かぶのは自分の為に罪を犯し、そして永遠に別れる事となった少女。 目の前で逝ってしまった今は亡き親友との悲痛な別離も、イリヤを支えていた。 例え客観的に見ればどれだけ仕方ない言える悲劇であっても。 どうする事も出来ない別れだったとしても。 彼女だけは訴え続ける。抗い続ける。 「例えどんな理由があっても、美遊みたいなお別れを。私は仕方ないって言いたくない…!」 満身創痍でありながら、背筋を伸ばして。 紡ぐ言葉の力強さは、やはり揺るぎのない物だった。 そうしてイリヤはただ真っすぐに悟飯を見つめ、彼の反応を待つ。 そんな少女に、少年が返事を返したのは、たっぷり一分は経過してからだった。 「……貴方の言っている事は僕にはさっぱり分からない。だから、これで楽にしてあげます」 イリヤ達と想い言葉は、どうあっても届かない。雛見沢症候群とはそういう病だ。 重度化すれば肉親すら手にかける事を厭わなくなる、惨劇と不幸の配達人。 殺し合いと言う状況下において、自然治癒はまさに奇跡に等しく。 雛見沢の部活メンバーが辿りついた賽子の6の目は、一朝一夕で辿り着ける境地ではない。 狂気は去らず、尚も悟飯は眼前の魔女を排除するべく動く。 素早く後方へ30メートル程の間合いを取ると、彼の姿が再び金色の戦士へと変身を遂げた。 ドロテアの能力に依る一時解除だったためか、乃亜が敢えてハンデを行使しなかったのか。 定かではないが、イリヤもステッキの強制排出機能でセイバーのカードを再展開している。 ならば悟飯もまた同等の芸当が許されても不思議ではなかった。 でも、そんなことは当人たちにとってはどうでもいい話。 今はただ、全てを終わらせる事に全力を賭す。ゆっくりと、落ち着いて構えを取る。 今のやたらとしぶとくなったイリヤでも、確実に消し飛ばすことのできる技の態勢に。 気を集中させ、かめはめ波の発射体勢に入る。 「逃げてもいいですよ。必ず当てて殺しますから」 「逃げないよ、私は。絶対に逃げない」 イリヤに動揺はない。 元より勝機があるとすれば。この後しかないと彼女は考えていたからだ。 彼女にとっては、むしろここからが本当の勝負。 悟飯が大技の発射体勢に入ると共に、イリヤもまた魔力をその手の聖剣に集中させる。 「か……」 狙うのは神造兵装、星の聖剣であるエクスカリバーの発射…ではない。 何しろ相手は文字通り本当に星一つ消し飛ばす火力の相手。 例えカードの英霊ではなく、正規の騎士王の聖剣であっても勝機は薄いだろう。 まして正規の英霊よりも劣化しているクラスカードの英霊であればなおさらだ。 だからこれはフェイクに近い。イリヤの本命は別の宝具だ。 「め……」 純粋な個の威力では必敗は定められている。 ならば狙うは圧倒的な威力を誇る相手の一撃を分散させ、逸らせる連撃を置いて他にない。 そしてイリヤが現在その身に宿している英霊は、正にその条件に沿った宝具を有している。 もっとも、それが放てるかどうかは別の話だが。 何故なら肝心の当該宝具は狂化スキルによって失われており、通常放つのは不可能。 如何に上書きの夢幻召喚でセイバーの剣技を得ていると言っても。 如何に今のイリヤの夢幻召喚の素体となっていると言っても。 そもそもクラスカードの原理である魔術は“置換”であり“加算”ではないのだから。 今セイバーの剣技を行使できているだけでも、理から外れた使用なのは間違いなく。 「は…」 『筋系、血管系、リンパ系、神経系…疑似魔術回路展開!』 チャンスは一度。発動可能性は極小。しかし零にあらず。ならば今はイリヤに賭ける他ない。 サファイアは可能性を僅かでも向上させるために、イリヤの肉体の全てを魔術回路とする。 彼女のスペックを瞬間的にでも引き上げ、本来なら不可能な出力行使を可能とするのだ。 本来はツヴァイフォーム展開のための諸刃の刃の機能だったが、今はサファイア単独。 その分イリヤへの負担は抑えられる──と言ってもそんな生易しい話ではなく。 少女の幼い肢体の、至る所が悲鳴を上げる。 文字通り体内の血管と神経全てに棘が生え、暴走している様な責め苦が苛む。 音と匂いが消えた。聴覚と嗅覚が潰れたのだ。 視界も闇に閉ざされつつある、後十秒も保たないだろう。 11歳の少女が味わえば悲鳴はおろか、発狂に至ってもおかしくない苦しみの中で。 それでも、イリヤスフィール・フォン・アインルベルンは微笑んだ。 「め……!」 「私、皆を守りたいの……バーサーカー」 己の中の願望器の機能、その僅かな残滓が告げていた。 その身に宿した英霊の力を信じろと。前へと進めと。 それを感じ取れば、もう不安も迷いも無かった。 ただ胸に渦巻くのは「良かった」という感情だけだ。 限界まで力を貸してくれる、頑丈で、強くて。 自分の願い(ワガママ)に応えてくれる、優しい英霊(バーサーカー)で良かった。 もう視界も真っ暗で、殆ど何も見えないけれど─── それでも、ゴールは今もはっきりと見える。だから。 ────並列限定展開(パラレル・インクルード) ────並列接路、装填(パラレルコネクション・オフ) 「何だ………!?」 今まさに、かめはめ波を放とうとしていた悟飯が眉をひそめ、それを中断する。 消し飛ばそうとしている標的が、一瞬別のものに見えたからだ。 自分よりも小さかった少女が二メートルを超える、巌の巨人に。 だが、すぐにどうでもいいと躊躇を打ち消す。例え少女であろうと巨人であろうと。 自分のかめはめ波で消し飛ばすだけなのだから。 魔女よ、消えて失せろ……っ! 風は途絶えた。 両者が、「来る」と確信を抱く。 彼我の距離は30メートル。致死の光が放たれ到達するまでに三秒かからない。 故に───この三秒で勝敗が決する。 「波ァ────ッ!!!!」 少年の絶望と怒りが籠められた、光の波濤が迫る。 彼我の戦力差は歴然。 ───相手にとって不足なし。 武装の差異。 ───仔細問題なし。 ───元よりこの宝具はあらゆる武具に対応する“流派”なれば。 少女の肉体への負荷。 ───心配は無用。事を成せばあらゆる痛苦は己が引き受けよう。 ───今はただ、彼女の願いを信じるのみ。 目前に迫る、死へと向けて踏み出す。 激流と逆巻く気勢。 見切った力の奔流を構成する、九つの循環点へと狙いを定め─── ────全工程“置換”完了(セット)。 ────是、射殺す百頭(ナインライブズ・ブレイドワークス) 瞬間、 絶死の光帯(ロストベルト)を、神速を以って凌駕する─────! 約束された勝利の剣(エクスカリバー)から放たれる九つの黄金の輝き。 それは瞬時に九頭の龍に姿を変えて、孫悟飯の放ったかめはめ波の光と激突した。 これこそイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが見出した起死回生の一手。 射殺す百頭(ナインライブズ)。ギリシャ神話最強の大英雄ヘラクレスが誇る戦技。 対幻想種用の竜を形どった追尾する斬撃を、最強の聖剣の輝きに乗せ発射したのだ。 戦闘の激化を狙い乃亜が狂化機能だけでなく、クラス継承の機能にも手を加えた為か。 担い手がかつての願望器としての機能を有していた少女(イリヤ)だからか。 それとも───彼女がその身に宿した英霊が彼の狂戦士(ヘラクレス)だったからか。 ハッキリした事はどれも推測の域を出ない。しかし結果だけを述べるならば。 通常の上書き夢幻召喚では不可能な芸当を見事彼女は成し遂げて見せたのだ。 「終わりだぁッ!!」 だが、発射の成功がイコール勝利には成りえない。 孫悟飯の放ったかめはめ波は、最強の幻想と神域の絶技を合わせてもまだ届かない。 最強の人造人間との最後の対決では、更に強大なエネルギーすら打ち破ったのだから。 数秒と掛からず、イリヤの放った光は悟飯の放った光へ飲み込まれる。 この瞬間、悟飯は勝利を確信した。しかし次瞬、状況は彼にとっての不条理を起こす。 「な……なにっ!?」 圧倒的に気の総量で勝っている筈の悟飯のかめはめ波が、分裂した。 別れた光の束はそのまま逸らし弾かれ、目標とは大幅にズレた方向へと飛んでいく。 刹那の思索の後、悟飯はイリヤが撃った攻撃の真意を看破した。 気の大きさではまず競り負ける、故に彼女は最初から正面対決で勝とうとしたのではなく。 連撃によって自分のかめはめ波を散らし、弾いたのだ。生存領域をこじ開けるために。 そう、イリヤにとって、勝機は初めからこの瞬間しかなかった。 だからどれだけ打ちのめされても接近戦を選び、悟飯にこのままでは消耗戦になると思わせたのだ。 「────いや、まだだッ!」 小賢しい策によって散らされたと言っても、まだ三割を超える威力は保っている。 そしてそれは、如何にしぶといといっても今のイリヤを消し飛ばすのに十分な威力。 そう悟飯は見ていたし、事実その見立ては正しかった。 彼の放ったかめはめ波は、十二の試練を突破し彼女の肉体を消し飛ばす威力を保っていた。 (これ……避けきれな………っ!) イリヤもまた、同じ結論に至り。 それ故に最後の力を振り絞って回避しようとするが。 全ての魔力を振り絞った直後の為、がくりと膝が墜ちる。 肉体に蓄積した無茶の代償は、彼女を見逃したりはしなかった。 死が、目前へと至り────少女を呑み込む、その刹那。 イリヤの後方から何かが飛来し、かめはめ波の光の中へと飛び込み。 飛び込んだ魔力を帯びたイリヤにとって見覚えのあるその矢が、炸裂した。 (あぁ……) だが、現実は無情だ。未だ悟飯のかめはめ波は死んではいない。 矢が更にかめはめ波の威力を削いでなお、回避する事は叶わず。 光の波が、遂に到達を果たす。それでもイリヤはフッと笑みを零した。 結果は敗北。必死で立てた策も、悟飯の才能の前に捻じ伏せられた。 悔しいし、届かなかったのは口惜しい。それでも嬉しかった事がたった一つ。 先ほど飛んできた矢。見紛う筈も無い、あれを放ったのは────、 (ありがとね、クロ────) 魂を別ち、この島においては袂を別ったはずの己の半身。 彼女が自分を救うために放った贈り物を想い、微睡むように微笑んで。 そして、少女の肉体と意識は光の中に呑み込まれた。 「終わった………っ!」 イリヤがかめはめ波に飲み込まれるのと同時に。 悟飯の超サイヤ人の変身も解除される。だが、問題ない。 結局消耗の大きい戦いになってしまったが、ヤミもドロテア達も最早死に体。 奴らを殺してから暫し休息を取ろう。そして、その後父以外の参加者を殺す。 彼が狂気に囚われた算段に意識を切り替えようとした、丁度その時。 「な────!」 打ち破った筈の、イリヤの放った二本の光線が迫る。 担い手が敗れてなお、他の七本の同胞が滅びてなお。 生き残った二対の光の竜は、そのまま朽ち果てていなかった。 ただ、使命を果たすために。大技を放ったばかりで、殆ど無防備になった標的に。 追尾(ホーミング)を行い、その牙を、突き立てるために! 「う、わあ゛あああああああっ!!!」 気を放ち防御しようとするが、時すでに遅い。 刹那の勝機に食い込むように。孫悟飯に、一切の抵抗を許さず。 少女が全てを賭して放った光の竜は、少年を飲み込み、全身を衝撃が襲う。 轟音に全てがかき消された世界の中で。孫悟飯は考える。 何故、圧倒的に少女よりも強かった筈の自分がこうなっているのか。 何故、野比のび太を利用していた筈の彼女がここまで自分と戦ったのか。 何故、のび太を利用した筈の彼女の放った光が───こんなにも、星の光の様に眩いのか。 どんなに思考を巡らせても、答えは出ず。やがて彼の意識も光へと溶けて。 ────そして、世界を救う筈だった少女と世界を救った少年は、光の中へ消えた。 前話へ 次話へ
https://w.atwiki.jp/majikon/pages/23.html
メニュー/2009年09月03日/【NDS】マジコン販売価格情報 11【業者立入禁止】 メニュー/2009年09月03日/Vジャンプ編集者がマジコンユーザーに苦言 「法律的にはダウンロードはOKとかじゃなく、道徳、モラルの問題でダメなんです」 #blognavi
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1220.html
扉を開けると、中にゆっくりの親子がいた。 「ゆっ! ここはれいむとおちびちゃんのおうちだよ! おにいさんははいってこないでね!」 「ゆっくちでていっちぇにぇ!」 私は言葉を失った。これがいわゆる『おうち宣言』というやつだろうか。 以前、知人が部屋を占拠されかけたと聞いた時は、気の毒に思いつつも笑ってしまったものだが――。 どうやら扉を閉め忘れていたらしい。うっかりしていた。これでは友人を笑えないではないか。 「ゆっ? れいむとおちびちゃんのかわいさにみとれちゃってるの? かわいくってごめんね!」 「きゃわいくってごめんにぇ!」 呆気にとられていただけなのだが、なぜ見とれていたと受け取れるのだろうか。 「その――ここはおまえたちの家じゃあないんだ。扉は開いていたかもしれないけど。ここは私の――」 「ゆっ? なにをいっているの? ここはれいむとおちびちゃんのおうちだよ!」 「れいみゅとみゃみゃのおうちだよ!」 まるで聞く耳を持たない。いや、耳という部位が無いのは見てわかるが――。なるほど、これが『餡子脳』か。 ゆっくりを病的なまでに忌み嫌う人間がいることにも納得できるというものだ。 決して気が短くない私だが、目の前の物体と話していると、こめかみの辺りにくるものがある。 「そうか。ならそのまま、そこにいてもいいよ」 そうだ。たかだか人語を理解する饅頭二匹、いてもいなくても大して困ることなどない。 これが例えば犬や猫で、あまつさえ子どもでも産まれていた日には、さすがに私も慌てるが。 「ゆっ! いわれなくてもゆっくりするよ! それよりおにいさんは、れいむとおちびちゃんにあまあまちょうだいね!」 「ちょうだいにぇ! たくしゃんでいいよ!」 ――もう言葉もない。出会ったばかりの私を召使いか何かだと思っているのだろうか。私は傍らに置いた袋を広げ、ゆっくりたちに見せてやった。 残飯などの生ゴミだ。こんなものでも、野良ゆっくりにとってはごちそうだと聞いたことがある。 生ゴミの回収日には、ごちそうを求めるゆっくりとカラス、猫に加え、それらを駆除しようと躍起になる住民の争いが、そこかしこで繰り広げられるのだとか。 幸いにして、私の家の近所にある集積場は平和だ。 案の定、二匹はゴミに飛びついた。無我夢中とはこのことだ。よほど腹が減っていたのか、それともこいつらにはこれが普通なのか。 どちらにしても――何とも浅ましい光景だ。 「ゆゆ~ん! ごはんがいっぱいだよ! むーしゃむーしゃ! しあわせー!」 「おいちいにぇ!」 どうやら味にも満足してくれたらしい。食いカスを飛び散らせながら、おいしそうに食べている。口に出すほど幸せそうでなによりだ。 「ゆっくりごちそうさま!」 「ごちしょうしゃま!」 大量の生ゴミは、ほとんど無くなってしまった。満腹になって気が済んだのか、二匹は私の存在を忘れたかのようにとりとめのない会話を始める。 「おちびちゃん! おかあさんがしょくごのおうたをうたってあげるよ!」 「ゆわ~い! ゆっくち! ゆっくち!」 親の「ゆっくりのひ~」という歌声は聞くに耐えなかった。この雑音に悩まされる住民のために、保健所職員が日夜駆ずり回っているというのもよくわかる。 ゆっくりを飼っている物好きは、近隣住民に対してさぞや肩身の狭い思いをしているのだろう。 「ゆっ! おにいさん!」 扉を閉めようとした私に、ゆっくりが声をかけてきた。どうやら存在を忘れられていたわけではないらしい。だからといって嬉しいわけでもないが。 「こんどはあまあまをもってきてね!」 「あまあま! あまあま! ゆっくち! ゆっくち!」 それなら焼き饅頭などはどうだろう。 私は改めて扉――焼却炉のゴミ投入用扉を閉め、火種を入れた。薪は少なめにし、じっくりゆっくり焼くことにしよう。 そして何となく耳を澄ます。行きがかり上、私も少しいじわるになっているようだ。 「ゆっ? なんだかぽーかぽーかするよ!」 「ぽーかぽーかしゅるよ!」 中から聞こえてくる、そんな脳天気極まり声は、 「あぢゅいいいいいいいい! だずげでええええええ!」 「だじゅげでにぇ! がばいいれいみゅをだじゅげでにぇ! みゃんみゃああああああ!」 という聞くに耐えない悲鳴に変わり、やがて聞こえなくなった。 (了) 以前書いたもの…… ふたば系ゆっくりいじめ 525 犬 ふたば系ゆっくりいじめ 532 川原の一家 ふたば系ゆっくりいじめ 554 ゴキブリ(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 555 ゴキブリ(後編) ふたば系ゆっくりいじめ 569 ねとられいむ ふたば系ゆっくりいじめ 622 格子越しの情景 ふたば系ゆっくりいじめ 654 奇跡の朝に ふたば系ゆっくりいじめ 715 下拵え ふたば系ゆっくりいじめ 729 ある日の公園で ~the Marisas and men~ ふたば系ゆっくりいじめ 740 彼女はそこにいた ふたば系ゆっくりいじめ 759 Eyes
https://w.atwiki.jp/boomerang3003/pages/17.html
※トイラジメーカーがホビーラジコンを出した場合も含む(順次追加あり) 日本 タミヤ 京商 ヨコモ 無限精機 ニチモ ニッコー マルイ ヒロボー タイヨー ハイテック
https://w.atwiki.jp/nintendods/
ACE3DS http //www.ace3ds.com/ AceKard http //www.acekard.com/ CycloDS Evolution http //www.cyclopsds.com/ DS Fire Link http //www.dsfirelink.com/ DS Link http //www.ds-link.net/ DSLinker http //www.dslinker.cn/ DSTT http //www.ndstt.com/ DSvision http //www.dsvision.jp/ DS-X http //www.ds-x.com/ EDGE http //www.edge-ds.cn/ eWin2 http //www.ewinflash.net/ EZ Flash http //www.ezflash.cn/ G6 Flash (G6 Lite) http //www.g6flash.com/ iTouchDS http //www.itouchds.com/ M3さくら http //gamewiki.jp/dsm/index.php?M3SAKURA M3 BootMenu Kaura http //www.gbalpha.cn/China/index.htm M3/G6 DS Real and M3i Zero http //www.m3adapter.com/ M3 BootMenu Kaura http //www.gbalpha.com/Global/index.htm Max Media Player http //us.codejunkies.com/mpds/index.htm N-Card http //www.dsgba.com/ Neoflash http //www.neoflash.com/ Ninja http //www.ninjapass.com/ R4DS http //www.r4ds.me/ R4i GOLD 3DS http //www.r4ids.cn/ R4i RTS http //www.r4rts.cn/ R4i SDHC 3DS http //www.r4i-sdhc.com/ R4itt http //www.r4itt.net/ SupercardDS http //www.supercard.cn/ Ultra FlashPass EX http //www.ndsgba.net/ M3i / M3l Upgrade (m3iupgrade.com) http //www.m3iupgrade.com/ TTi Upgrade (nds-tti.com) http //www.nds-tti.com/index.asp M3Adaptes Fake (m3adaptes.com) http //www.m3adaptes.com/ M3Adaptador Fake (m3adaptador.com) http //www.m3adaptador.com/ DSTT Advance http //www.dstt-adv.com/ DSTTi Gold http //www.ndstti.cn/ U2DS http //www.u2ds.com/ N5DS http //www.dsn5.com/ E7 http //www.dse7.net/ R4 Ultra / R4i http //www.r4ultra.com/ SUPER R4i http //www.super4i.com/
https://w.atwiki.jp/enjo/pages/163.html
ラジコン 参考:山々杯 →山本昌ラジコン城 ラジコン調整中 レース開始 ラジコン暴走すないぽ ラジコン炎上 KO ごほうび ラジコンにのる 援護なし 調整中 ∧_∧ ( ´昌`) ┐ ( つ凸O) ⊥_ | | ≡┌┘昌└┐ (__)_) ≡└。──。┘ レース開始 (2006ver) ◇ / \ / V\ .――――..-―――、 __◇ //. ∧∧//∧∧..||. \ _|_D. || __[//_ 〔゚~゚/[](ヽ`_´)|| _.\__ (´昌`|) lロ|=== |ロロ゚| ̄ ̄| ミヤマクワガタ号 ||. し □J | ∈口∋ ̄_l__l⌒l____|___l⌒l___||. | 34|  ̄ ̄`ー  ̄ `ー `ー `ー .し⌒J (~2005ver) ◇ / \ / V\ .――――..-―――、 __◇ .// ∧∧//∧∧..||. \ _|_D. || __[//_ (・w・/[](ヽ`_´)|| _\__ (´昌`|) lロ|=== |ロロ゚| ̄ ̄| ミヤマクワガタ号 ||. し □J | ∈口∋ ̄_l__l⌒l____|___l⌒l___||. | 34|  ̄ ̄`ー  ̄ `ー `ー `ー .し⌒J ラジコン暴走 ◇ . _,/´\ / \ \/ V\ (_,.、 .〉 .___゚∀゚ ,,,..._ .\ 〈 _|D || (.(´ ,.-= ゙ー ^ ′ (昌`;|) <ア、アレ? `ー ((、 ,.....__ し □J )) ```;ヽ | 34| -= " ,.-=" .し⌒J =CAUTION=ラジコン暴走中=CAUTION= ∧_∧ ( ;´昌`)あ… ┐ ( つ凸O) ⊥_ | | ≡┌┘昌└|グチャ! (__)_) ≡└。──。| すないぽ ∧_∧ て ∧ ∧ (;´昌`) そ ┐ガシャーン! (。∀゚ ) ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙… ( つ凸O) ⊥_ て ⊃ | | ≡┌┘昌└┐そ/ / (__)_) ≡└。──。┘_(_) ラジコン炎上 γ ⌒ ⌒ `ヘ イ "" ⌒ ヾ ヾ ドガァァァァァァァァン..... / ( ⌒ ヽ )ヽ ( 、 , ヾ ) ゞ (. . ノ. .ノ .ノ ゝ、、ゝ.....| |..., , ノソ | | ノ 从 ゝ __ ノ 凸 i,-、 _|__| ( ;) ( 34 ) | | ポロッ し ⌒J □――◇ ラジコン炎上中 KO アソンデバッカリダカラコンナコトニナルノヨ!! ウワァァァァン ∧_∧ 。 シバラクラジコンボッシュウ!! ∧_∧ (#‘∀‘)/ ̄ ̄\| ( T昌T) ( つ└○-○┘ ( つ つ 人 Y と__)__) し (_) ごほうび ヨクガンバッタワネ ワーイ ∧_∧ 。 __ ∧_∧ゴホウビノアタラシイラジコンヨ ∩(*´昌`∩ |/ (‘∀‘*) ヽ ノ └○-○┘⊂ ) | 34 | Y 人 (_)_) (__) 丿 昌好投 ラジコンにのる \ V\ ◇ . || ∧_∧ □ おじさんだってがんばってるよ! ( ´昌`) ) ◇ と /⌒) _ / (_ゝ,,_,ノ_,) / .――――..-―――、 //. ∧∧//∧∧..||. \ __[//_ 〔゚~゚/[](ヽ`_´)|| _.\__ lロ|=== |ロロ゚| ̄ ̄| ミヤマクワガタ号 || | ∈口∋ ̄_l__l⌒l____|___l⌒l___||  ̄ ̄`ー  ̄ `ー `ー `ー 援護なし _ \ 彡⌒ミ /_ /_Dヽ スカッ \ スカッ […з…]_/O)//_Dヽ [ ;^_^]_/O)\ 彡 二⊃  ̄ / [ ; ー。ー]_/O) 彡 二⊃  ̄ \ ノ __ \ / 彡 二⊃  ̄スカッ ノ __ \_ \∧∧∧∧/ ノ __ \ (⌒丿 (__) < ラな泣> (⌒丿 (__) ─────────< ジる き>────────── _ _ / <マコほた> ⑪ミ /_Dヽ_--- /----<サン ど く > _ ( ; ウΘウ) / .,,. /∨∨∨∨\ /_Dヽ / つつ / /ウタレタ ワタシガ \ (;ヽ`_´) (_つノ ⑪ / / ワルインデス… \ / \ し ∨.,,./ ∧_∧ \ |Dragons| ボテテ・・/ ( T昌T) \ | 13|
https://w.atwiki.jp/megatenroyale/pages/144.html
050話 閉鎖された病院の中で 葛葉ライドウが眼を覚まして最初に見たのは真っ白で無機質な天井だった。 仰向けのまま最後の記憶を辿ると、魔神皇と戦い、その途中で倒れたところで終わっていた。 それからの記憶は無い。だが生きているということは勝ったのだろうか、あの魔神皇に。 「此処は…」 今自分が何処にいるのかを知ろうと、ライドウはむくりと起き上がった。肩に鋭い痛みが走り、思わず顔をしかめた。 右肩には真新しい包帯が巻かれ、にわかに熱を含んでいる。腕を動かそうとすると奇妙に皮が突っ張るような感覚があった。 その上目覚めたばかりとは言え、異様に頭が重いような気がして、体を起こしていられなかったので、彼は再び倒れるようにベッドに寝そべった。 「よお、気付いたか。」 聞きなれた声がして、ライドウはそちらに眼を向けた。鳴海が部屋のドアの隙間からこちらを見ていた。 腕には食べ物―― 殆どが果物と、袋に包まれた饅頭、それから大正生まれのライドウから見たら十分に珍しいスナック菓子のような物ばかりを抱えている。 「鳴海さん、此処は一体…。」 「森本病院だよ。お前、覚えてないのか?」 ライドウは黙って首を横に振った。 「仕方無いな…。」 鳴海は、ライドウが横たわっているベッドの横の丸椅子を引っ張り出すと、それに腰を下ろし、事の経緯を話した。 まだライドウは、夢と現実が一緒くたになっているらしく、しばらくは何を言っても今一つ要領を得ない状態だった。 だから説明する鳴海からしたら幼稚園児に難解な言葉を教えているような手応えだったに違い無い。 だが、それでも彼は辛抱強くゆっくりと噛み砕くように説明をした。 それを聞いている内に、ライドウは徐々に意識がはっきりしてくるのを感じた。そんな脳味噌で混濁した記憶の糸を手繰り寄せる。 ピアスの少年との戦いで受けた傷が元で、手当ての為に病院に向かっていたこと。 その途中でよりによって魔神皇に襲われたこと。その時にライドウは倒れ、鳴海も瀕死の重傷を負った。 それから鳴海が何とか撃退したが魔神皇は生死不明。 その後、どうやらライドウが殆ど無意識の内に宝玉で鳴海を回復させ、此処まで運んできたらしい。 「じゃあ魔神皇は…。」 「一応逃げ切ることには成功したが…あれがそう簡単に死んでくれるとは思えない。 あれが生きていて、今も山の中で俺たちを探してるんだとしたらかなり恐ろしいが…。 こんな状態じゃ動くことも出来ないからな。しばらく此処に留まるしか出来ないだろう。」 「僕なら平気です。すぐに此処から…。」 言いながらライドウは体を起こした。が、その途端視界が真っ白に染まり、 平衡感覚が一気に奪われるような感覚が全身を襲い、とても起きていられなかった。 そんなライドウを溜息まじりに見ながら鳴海は倒れたライドウの体に毛布を掛けなおした。 「今の状態じゃ無理だろ。お前血が足りてないんだから。 ……まったくこの病院は気が利かないったらありゃしない。 消毒と縫合は何とか出来たが…それでも俺だって殆ど素人同然だからな、いつ傷が開いてもおかしくない出来に過ぎないし、 輸血用の血なんて何処にも無かったよ。それどころかこの病院には食堂も売店も無いと来た。 他の病室から残ってた食べ物をかっぱらって来たが、まあ、ロクな物が無いよ。 それでも何も食わないよりかはマシだから食っとけ。」 と、愚痴混じりに説明しながら鳴海はライドウの枕元に置いたいくつかの食べ物を顎で指した。 それをぼんやりと聞きながらライドウは窓の方を見つめた。 窓からは明るい日差しがさんさんと差しているが、頑丈そうな鉄格子がそれを阻んでいる。 そうだ、此処は全館が精神科病棟なのだ。 おそらく、患者は皆病室に軟禁状態だったのだろうから売店も食堂も必要無いのだろう。 そんな偏見と強制に満ちた経営体制に偽善者ぶって文句を言うつもりは無いが、勤務している医師は不自由ではなかったのだろうか。 そんなどうでもいい疑問が頭を掠めたが、それは口にしなかった。 食欲は、鳴海の期待に応えるには不十分な程度に無かった。 だが、血が足りないのなら無理にでも胃に詰め込んでおかなければならないだろう。 今度は貧血を起こさないように慎重に半身を起こし、無造作に置かれた食べ物の中からしなびた林檎を取った。 一口だけ口にしたが、見た目どおり水分は程よく飛んでいて、飲み込む気にはなれないような代物だったが、それでも飲み込んだ。 そんなライドウの、一連の咀嚼運動に満足したのか、鳴海は立ち上がり、大きく伸びをした。 「ちょっと出てくる。」 「何処に行くんですか?」 「もう一回輸血用の血を探して来るんだよ。でなきゃ食べ物だ。まだ院内を全部探索したわけじゃないからな。 ライドウ、すぐに帰ってくるから動くんじゃないぞ。 ……心配すんな。すぐに戻ってくる。」 念を押すように言ってにっこり笑うと鳴海はくるりと後ろを向いた。 いつもの鳴海らしい、さり気ない仕草だった。そのままぱっと手を振り、鳴海は振り返りもせずに病室を出た。 だが、ライドウには何故かその後姿がやけに物悲しく、もう二度と見ることが無いのではないかという不吉な不安に駆られた。 鳴海は、ライドウに気付かれないように外に出た。 予め病室の外に置いていた自分の荷物を取り、彼のいる病室の窓からは見えない角度にある裏口から、気配を消して、そっと。 この病院は殆ど空っぽだった。いくら探しても新鮮な血液なんて出てくる筈が無い。 それならば、外に出て同じ血液型の人間を、出来れば話が通じて協力してくれる意思のある人間――を、探さなければならなかった。 それも、ライドウと同じO型の血液型の持ち主に限り、ライドウの状態から時間もあまり掛けられない。 成功する可能性は限りなくゼロに近い。 それでも行くしか無かった。 でなければ、ライドウはこのまま徐々に衰弱して死んでしまう。 最悪でも、今のライドウには必要不可欠な、栄養価の高い食べ物を持ってこなければならない。 つまり、新鮮な肉を――。 異界開きを行い、この地獄の街から脱出する為にはその術を心得ているライドウが絶対に必要なのだ。 鳴海の頭をある恐ろしい考えが浮かんでいた。 限られた生存者の中で同じ血液型の人間を探し出すのは、普通に考えればほぼ不可能だ。 だが、この街は今殺意に満ち溢れている。だから新鮮な肉ならすぐに――。 考えて、すぐに止めた。 そんなおぞましいことをしたら駄目だ。 思い直したが、自分の中の人間に対する尊厳が、幾ばくか失われつつあるのも自覚していた。 鳴海も、この緊張の中で精神状態をギリギリで保っていたのかもしれなかった。 【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団】 状態 出血多量による重度の貧血 武器 脇差 道具 無し 現在地 蝸牛山 森本病院 【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】 状態 正常だが精神的にピーク 武器 メリケンサック クロスボウ 道具 チャクラチップ 現在地 蝸牛山 Back 049 Next 50.5